ヨーロッパ

いきなりスペインへ

 今スペインの南部、カルタヘナ(またはカータヘーニャ、Cartagena)という街の近くでこの記事を書いている。

 家人は思い立ったが吉日な人間で、今回も月曜日の昼にスペインへ旅行に行くことを決意。当然ながら実現するには私の同意を得なければならないわけだが、最終的にめでたく同意を得たのち、二人して旅行の準備に奔走。

 そして約14時間後、火曜日の夜中の3時に家を出発した(笑。

 普通なら飛行機で行くとこだろうが、我々の場合はドライブ旅行である。しかもバイクを持っていくためにトレーラーを車の後ろに引っ張っての遠距離ドライブ旅行だ。

 英仏海峡を越え、更にフランス国境を越えてスペインに入国した後に予約したホテルで一泊。ここまででおよそ17時間かかった。二日目はさらに南下して、およそ8時間後に目的地に着いた。
 
 今滞在しているのはイスラ・プラナ(Isla Plana)という、昔は小さな漁村だったと思われる、のんびりとした小さな町。一番近くの大きな街はカルタヘナ(Cartagena)といい、この街は紀元前にカルタゴ人が国外拠点の一つとして築いた商港だ。地中海に面したこの街は、今でもスペインでも有数の商港都市らしい。どうりで近辺を通った際にコンテナ積載地や大型の運搬拠点と思われる建物を沢山見かけたわけだ。

 まだ観光はしていないのだが、近場のビーチを訪れて浜辺を歩いているときに、「天国」という言葉が浮かんだのである(笑。今は11月の中旬過ぎ、イギリスでは各地で雪が積もったと、スペインの抜けるような青空の下、ニュースで読んだ。私がいるスペイン南部は日中の気温が15度以上、日差しの下での体感温度は20度ちょっとくらいだろうか。空気はからりと乾いており、絶妙な加減のそよ風が七分袖から出た手首に優しくあたる。海はほぼ凪、3m程下の青緑色の海底が透き通った水を通してはっきりと見える。しかも、年間平均気温が15度程度というから、一年中とても温暖な気候なのだ。

 海岸沿いで見かける人々に高齢者が多いのも、入ったレストランでスペイン語以外(ドイツ語や英語)を話す高齢者がいるのも、うなずけるわけだ。スペインはヨーロッパ北部に比べて物価が安く、また2008年のリーマンショックで経済も打撃を受けた影響で、おそらく一時高騰した不動産価格も下落して、今は手に入りやすい価格になっているに違いない。私が滞在しているような小さな街はなおさらでだろう。

 暖かい日差しの下、白い波頭があまり立たないほど控えめに浜辺に寄せる波を眺めていると、その緩慢なリズムに誘われて心も脳みそもするりと溶けていってしまいそうな感覚に襲われた。

 脳みそが溶けても構わない年齢になったら(笑、こういう温暖なところで暮らすのもありかもしれない。
スポンサーサイト

安全というもの

 かれこれ2ヶ月ほどこちらの更新をお休みしてしまった。
主な理由は仕事が忙しかったことに尽きるが、それでも書きたいネタはどんどんたまっていくので、全てをこちらに書ききれないのが残念。

 6月中にはヨーロッパ内での出張が入って、ロンドン・ヒースロー空港を何回か利用する機会があった。最近の飛行機での旅行でうざったく感じるのが、空港でのセキュリティチェックである。同じように感じている人は私以外にも沢山いらっしゃると思う。

 ヨーロッパ圏内ではパソコンバッグ等大きめのバッグ(いわゆる機内持ち込み手荷物)のほかにハンドバッグの機内持ち込みが認められている。二つ持っていけるわけだ(日本でも同じ)。
これが英国内空港から搭乗する際に限って、だめなのである。機内持ち込み荷物は純粋に一つだけと制限されている。例えば女性がハンドバッグをPCバッグ以外に携帯しているような場合には、いかなる形でもいいのでとにかく荷物を一つにまとめることが要求される。
 
 私がこのケースだった。この規制を知らなかったのは、昨今の状況を慮れば事前に確認しなかった自分が悪いのだろうが、パソコンを入れているバッグには、ハンドバッグなどを入れる余裕もなく、かといってそのままではセキュリティも通過させてもらえず(正確に言えば、このチェックはパスポートコントロール以前に行われていて、X線を使ったセキュリティチェックでは荷物の個数はチェックしていない様子)、困ってしまった。最終的には、航空会社のカウンターから大きめのショッピングバッグをもらい、それに両方を詰め込んで「荷物は一つ」としたことで(笑)、ようやくそこを通過させてもらった。

 しかしこれはまだいい方で、何度も抜き打ち的に繰り返されるセキュリティチェックによるトラブルはいやなものである。
 
 フランクフルト空港で目撃した話になるが、それは二度目のセキュリティチェックも通過し、搭乗ゲート直前に設けられた三度目のチェックポイントだった。私の前にいた老夫婦が、もちろんこんなところでまたセキュリティチェックがあるとは予期もせずに買い込んでしまったウォッカのボトルを没収されてしまったのだ。もちろんこれも最近の液体物持込規制が理由。係員に懇願する老婦人と、憤慨して文句を言う老紳士。しかしそこはドイツ、ルールですからと、怖い顔をした係員のおばさんはにべもない。様子を見ていて気の毒になったが、もちろんどうすることもできずにその場を離れた。

 これはこの老夫婦に限った話ではない。私も二度目が終わるとさすがにこれが最後だろうと思ってミネラルウォーターを購入すると、その後に控えていた三度目のチェックで没収されたことがある。DFS(Duty Free Shop)はどこも普通に営業しているし、どこにも「この先にセキュリティチェックがありますから、液体物の購入をお控えになりますよう」などという親切な表示はない。これは全世界の空港で同様だ。もしそういう表示があれば、乗客だって没収される品物に余計なお金を払ったりせずにすむものなのにと思うのだが。これもセキュリティの一環なのだろうか。

 セキュリティの厳しさに対して不平を言いたいのではない。逆に、安全のために決してそうやりがいもあるとも思えないような地道で地味な仕事を毎日繰り返している係の人達には、お礼を言いたい位だ。だが同時に、セキュリティに関連して増やしているだろう人員にかかるコストは、どれくらい運賃に跳ね返ってきているのだろうとも思う。

 そんなことを考えながら帰ってきて二日おいて、英国グラスゴー空港でのテロが起きた。しみじみ安全というものの価値を感じる今日この頃である。
 London night view 珍しく上空から見えたロンドンの夜景

ロシアと揉めると…

 エコノミスト(The Economist)を購読しているが、この雑誌、表紙のセンスが良くて、時々とてもウケてしまう。今週号の表紙はこれ↓。ロシア国旗を背景に、プーチンがマフィアの親分よろしくポーズを取っているのだが、手に握っているのは機関銃ならぬガソリン給油用の器具である。
Don’t mess with Russia

 つい最近、ロシア元スパイの暗殺事件が英国はロンドンで起こった記憶もまだ新しい。ロシア/プーチンに歯向かうとろくでもないこと、言うなれば個人レベルでは暗殺、国レベルではエネルギー資源の供給停止が起きますよ、というところだろうか。実際にロシアは、周辺の旧ソ連邦国家に対して石油の蛇口を開けたり閉めたりすることで、有利な外交を進めている。

 今年のヨーロッパは何百年か振りの暖冬だそうだ。モスクワでも、例年なら雪に覆われている時期なのに、未だ全く雪が積もっていないらしい。この暖冬のせいもあるのだろうか、今年は冬場の資源対策の話題をあまり耳にしないが、これが去年の冬はすごかったのである。例年並みの寒さだったように記憶しているが、秋の終わり頃から、冬場に向けての暖房に使われる石油と特にガスの供給が追いつかないのではないか、という懸念が広がり、ニュースでも北海油田の状況(そろそろ掘りつくして終わりだそう)やヨーロッパにおけるガスの供給状況について、随分取り上げられていた。その際に必ず触れられていたのがロシアである。地理的にも近い上に潤沢な石油・ガス資源を持っているが、ヨーロッパ諸国としては出来る限りロシアの世話にはなりたくない。ロシアを資源供給国としたら最後、ロシアに強力な外交カードを渡してしまうからだ。蛇口の開け閉めでコントロールされるようにはなりたくないということである。

 そういうヨーロッパ諸国とロシアの外交情勢についても触れられているのではないかと想像するが、実はまだ記事は読んでいない。表紙についてごたごた書いている時間があれば、内容を読めと言われてしまいそうだ(笑)。
 エコノミストはそれなりに一冊が読み応えがある上に週刊とくると、なかなか隅々まで読みきれないのがつらいところ。古いのを読んでいるうちに新刊が届くから、机の隣の山がだんだん大きくなってしまう。隔週にならないかな、などと勝手なことを思ったりするが、、やはりそれより自分の英語を読むスピードを上げる方が先なんだろう。

[映画] ベルヴィル・ランデブー(Belleville Rendez-Vous) (2003)

 ヨーロッパ(といっても大陸側の話だが)では、自転車がずい分人々に身近な存在なように見受けられる。例えば、ベルギーに行った際、オランダのビーチにドライブに行く機会があった。その道中、週末だったこともあろうが、家族全員で、あるいは中年のカップルでサイクリングを楽しんでいる人々がずいぶん沢山いて、驚いた。ベルギーでも自転車は目についたが、なぜかオランダに入った途端に目に入る自転車の数がさらに増えたのだ。ただ田園地帯を通って行ったので、国境を越えると言っても特にサインがあるわけでもなく、バーやカフェのビールの看板ががハイネケンに変わるから、それと分かるだけなのだが(笑)。
 
 恐らく平らな地形も自転車がポピュラーな理由の一つなのだろうが、目的地のビーチ周辺では流れる自転車の数があまりに多くて、一瞬北京はこんな感じなのかと思ったくらいだ(大げさ)。でもビーチ前にぎっしりと止めてある自転車の中には洒落たものも沢山あり、またさりげなく凝ったアクセサリーを付けていたりして、人々がサイクリングも自転車自体も楽しんでいる様子が感じられた。

 もちろんオランダだけではない。7月にパリに行った際には滞在最終日がたまたまツール・ド・フランスの最終日で、タクシーの運転手もレース終盤の様子を熱心に話してくれた。そしてツール・ド・フランスと聞いて私が真っ先に思い出した映画が、この「ベルヴィル・ランデブー」なのである。

 映画の話をするのに、ずい分前置きが長くなってしまった(笑)。でも、日本人にはあまり馴染みがないツール・ド・フランスのような自転車レースも、大陸側ヨーロッパでは映画の題材にする位人気のあるスポーツなのだろうと、実際に目にして感じたからである。ちなみにいろいろなスポーツを発明した英国人は、自転車にはそんなに興味がないように見受けられる。代わりに、歩くのが好きだ。これについては、また別の機会に触れたい。

 シャンピオン少年は、おばあさんに育てられて平穏(?)幼少期を送るが、彼の情熱を勝ち得たものが自転車。出だしは三輪車だが、ツール・ド・フランスを目指して、おばあさんと訓練を重ねる。そして見事レース出場を果たすのだが、なんとレースの途中で悪者達にさらわれてしまう。そこで、おばあさんがペットの犬と共に、大事な孫を探しに冒険の旅に出る、というのが物語の大筋である。シャンピオンが主人公かと思いきや、実はこのおばあさんの大奮闘の方が物語のメインだ。
Belleville Rendez-Vous

 フランス人監督による、フランス、カナダ、ベルギー共同制作のアニメーション映画だが、セリフがないに等しい。だから登場人物の表情や情景描写がより引き立ってくるのだが、下の画像からも分かるように、クセのある画ははっきり言って雰囲気が暗いし、登場人物は極端にデフォルメされている。これはウォレスとグルミットのような無邪気なアニメーションではない。ブラックが入ったユーモアに多少のグロテスクさが加味されて、1930年代風ジャズを組み合わせた(この音楽がまた良い)、というのが全体の雰囲気だ。
004_s.jpg 005_s.jpg 0052.jpg

 ただ、これが観ていると独特の味わいで、笑わせられながらだんだん引き込まれていく。この風味、この後味、どこかで見たことがあると、観終わった後で思い出したのが、同じくフランス人のジュネ監督(Jean-Pierre Jeunet)の「デリカテッセン(delicatessen)」。暗い色調の画像、戯画化された人物達とブラック・ユーモア。この独特の処方は、フランス人好みなのだろうか。

 ディズニーやピクサー、ジブリだけがアニメーション・スタジオではない(どれも好きだが)。たまにはこんな違った雰囲気のアニメーション映画を観るのもいいと思う。私がこの映画を観た時には、日本人受けしなくて日本では公開されないのではないかとも思ったが、日本語の公式サイトを発見し、ミニシアター系でも公開された様子を見て、嬉しかった。

 フランス語原題は'Les Triplettes De Belleville'。オフィシャルサイトにも表示があるが、いろいろな賞を受賞している。

評価:★★★★☆(4.0/5.0)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。