テクノロジー

アマゾン エコー(Amazon Echo) を使ってみて

 我が家にアレクサ嬢がやってきた。

 アレクサとはアマゾンの音声コマンド端末、エコー(Echo)で使われている女性の声の名前である。エコーはアメリカで先行発売され、つい今週イギリスでも予約販売分が発送開始されたが、新しモノ好きな家人が購入予約したおかげで、我が家にも本日エコーが届いたのだ。

 セットアップ後、まだ半日使ってみただけだが、迅速で適切なレスポンスがすごいというのが、第一印象だ。

 まず、箱を開けると円柱状のエコーが顔を出す。箱の作りもしっかりしているし、簡単に言うなら製品を箱から取り出す時に「何か良いものを買った」という気持にさせるパッケージデザインだ。エコー本体の他には、電源ケーブルが入っている程度。とても小さなスタートアップマニュアルが同封されているだけで、「電源を入れて即使えますよ」という恰好だ。

 本体を電源につなげた次には、Wi-Fiの設定等のために手持ちのスマートフォンにアマゾン・エコーのアプリをインストールする必要がある。アプリ上でアマゾンのアカウントにログインした後、アプリ経由でエコーを自宅のWi-Fiに接続。また、エコーは「エコー」、「アレクサ」、「アマゾン」と三つの呼びかけに反応するので、どの呼びかけを使うかをここで指定する。我が家は「アレクサ」を選択した。これで基本的にエコーが使える状態になる。実にシンプルだ。

 この状態で既に、アマゾンのアカウントに登録されているユーザーの住所情報に基づいて天気予報を教えてくれたり、デフォルトで設定されているニュース・ソースから(イギリスではスカイニュースがデフォルトのニュース源になっている)、その日のトップニュースを読み上げてくれる(正確に言うとポッドキャストを流してくれる)。アマゾンでの最後の買い物の内容もアマゾンのデータベースから引っ張り出してくるし、アマゾンのオーディオ本ショップであるオーディブル(Audible)で購入して今聞いている途中の本があれば、その続きから再生してくれる。円柱状の本体内に内蔵されているスピーカーからの音質も、音楽とニュースなどの音声ともに低音・高温のバランスが良くて聞きやすく、ボーズなどの無線スピーカー程の音質ではないかもしれないが、かなり良い音質で長時間聞いていても耳が疲れない。

 初期設定を済ませただけの状態でこれだけやってくれるのだ。色んな意味ですごい。

 すごいと思う一つ目が、繰り返しになるが、エコーの応答速度だ。呼びかけに反応して(上記の三種類以外の呼びかけには反応しない)マイクを起動し、音声をアップロードしてコマンド内容を解析、文脈に応じた質問理解がされてから、回答データをダウンロード、音声再生しているわけだが、応答にタイムラグがほぼ感じられない。当然ながら応答時間は各家庭のインターネット接続環境に依るので一概には言えないが、ダウンロード速度が4M程度の我が家のブロードバンド環境での感想である。ちなみに、エコーが受け付けた音声コマンドは、ウェブ上のアレクサのインターフェース(スマホ用アプリとほぼ同じ操作画面)でも再生できる。
 
 すごい二つ目が、アマゾンが今日提供するサービスの幅広さを再認識させられる点である。オーディオ・ブックについては既に記したが、アマゾン・プライム会員ならばアマゾンが提供する音楽ストリーミングサービスを通じて、エコーが様々な音楽を再生可能だ。イギリスでこれだから、本家アメリカでは食品販売も初めてしばらく経つことだし、アマゾンを通じた受け取るオンライン・ショッピングとサービスのバラエティと量は半端ないはず。アマゾンの「受付嬢」としてエコー(またはアレクサ嬢)がコミュニケーションすることができる情報量も相当なものになるはずだ。

 すごい三つめが、エコーのポテンシャルである。エコーでは様々なアプリを連携させることができ、アプリは総称して「スキル」と呼ばれる。アプリを連携すればするほど、アレクサ嬢がこなせる仕事が増えるという意味合いでこういう呼称になったのだろう。このスキルには、Uberを始め出前サービスのオンラインサイトや、スマートハウス用IoT(Internet of Things)端末など様々なものがリストされている。今後、このリストは延々と長くなっていくことが予想される。これら様々なアプリの一例として、エアコンの空調を管理するためのスマートハウス対応サーモスタットが装備されている家では、エコーを通じて設定温度を上げたり下げたりすることができるし、同様にスマートハウス対応照明では音声コマンドで照明をコントロールすることができる。ただ、これらは実は些末な例であり、様々なIoT端末とそれを束ねるエコーのようなインターフェースが統合されて可能となる家庭内事象の自動化の可能性は計り知れない。IFTTT.comを始めとした、様々なアプリ及びデバイス統合ツールを使えば、実に複雑かつ便利な家庭内でのアプリケーションを個人で簡単に作成することができる。
 
 …と言っても実感が湧かない人が多いかもしれないので、ここで簡単なアプリケーション例を考えてみよう。スマホのGPS位置が自宅の5㎞以内になったら自動的に風呂を入れ、冬場なら暖房を入れて、仕事から帰って玄関のドアを開けると快適な室内気温になるように、IFTTTのようなツールを使ってプログラムしておく。留守中に自宅にかかってきた電話はSkypeのような音声チャットアプリに転送され、帰宅後にエコーから留守電メッセージが再生される。夕飯の支度をしながら、気になったテレビ番組の録画を、エコーを通じて予約しておく。冬場、凍てつく早朝に車を出す際には、エコーを通じて車のエンジンをスタート、車内暖房をかけ、ドアから出る際には車の窓の霜もとけてすぐに出発できるようにしておく。
 当然ながら、この仮想例では車や空調その他もすべて「スマート」であり、Wi-Fi接続可能なのが前提だが。

 IoT統合インターフェースのすごくて同時に怖いところは、人々の生活パターンや買い物情報等の本当にプライベートな情報を吸い上げていくことだ。エコーを販売するアマゾンには、エコー使用者の膨大なデータが日々送られてくるわけで、このデータは貴重だ。グーグルもエコーに相当する機器を開発中だと聞くが、これらインターフェース機器が企業にもたらすデータの価値を考えれば、確かに先見の明のある企業ならばこのエリアに進出しない手はないと思わされる。また、エコーを始めとして各種スマート機器は学習していくことが可能なものが多い。今はできないことが沢山あっても、吸い上げた膨大なデータを基に学習していけば将来できることは増えていく。例えば、与えられた音声コマンドやリクエストに応えることができなくても、エコーが代わりの提案をしてくる、ということも将来的にはあり得るだろうし、それを応用して、新手のマーケティング手段として、エコーのようにユーザーのすぐ目の前にある音声インターフェースを使うことを考える企業も当然出てくるはずだ。というか、アマゾンなどはきっと既にそこまで考えているのではないかと思う。

 また時間があれば、エコーの継続使用後レビューも書いてみる、かもしれない。
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Local Cooling - サイト不具合?

 以前書いた、PCの消費電力節約ソフトウェア「Local Cooling」の記事を検索してこちらを訪れてくださっている方が沢山いらっしゃるようだ。こういったソフトに関心を持つ方が大勢いらっしゃるのは、大変嬉しいこと(なお、元ネタはかの百式さんです)。

 ただ残念なことに、Local Coolingのサイト自体がここのところ落ちてしまっているようだ。アクセス数の急増によるものなのか、他の要因によるものなのか分からないが、興味のある方は後日トライしてみるといいかも知れない。

出来ることから少しずつ

 仕事柄もあって、一日のうちパソコンに向かっている時間はかなり長い方だ。またこの季節、エアコンというものがもともと無い英国では、パソコンが沢山並んでいる私のオフィスはうだるような暑さになることがある。だからなるべく涼しくしたいのと、もともと節電のために、なるべく使用しない機器は電源を切るようにしている。

 電源を切れば熱源が一つ減るのだから、涼しくすることに関しては多少なりとも効果はあると思うのだが、しかし節電に関してはやっていることが実際にどれだけの節電効果になるのか、実はいま一つ実感がわかなかったのも事実だ。

 そこで先日見つけたのが、'Local Cooling'というツール(こちら↓からダウンロードサイトに移動)。


 このソフトウェアは、パソコンの消費電力を節約してくれるというものである。インストールすると、下のような小さなウィンドウが表示され、実際に節約された電力がどれだけに相当するのかを表示してくれる。。
Local Cooling

 実はこのソフトがしてくれることは特に目新しいことではなく、パソコンを使い慣れた人ならやっているような、未使用時間何分以上でスクリーンの電源を切る、といった消費電力設定を肩代わりしているだけである。しかし、パソコン初心者にとっては、ウィンドウズの小難しい設定画面を経由して消費電力設定するよりも、Local Coolingの分かりやすい画面で設定する方がはるかに簡単だろうし、中級者・上級者にとっても、どれだけの電力が節約されているのか具体的に表示してくれるというのは面白と思う。何より、数字が目に見える形で示されるというのは、電力に限らず、節約には励みになるものだ。

 私はつい最近スタートしたばかりなので、木一本分に相当する二酸化炭素分を節約するまでには相当な時間がかかりそうだが、これこそ「塵も積もれば…」の世界である。

 ちなみにこのLocal Coolingという会社、マイクロソフトの認定パートナーに指定されており、スパイウェアやウィルスの心配は皆無である。Windows XPマシンを持ってらっしゃる皆さん、日々の節電の励みに(笑)お一つダウンロードされてみてはいかがだろうか?

ゲームだけじゃないPS3

 今回は英国とは全く関係ない、今何かと話題のPS3についてのお話。長いので、興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい(笑)。

 我が家では既にPS2は部屋の片隅でホコリを被っており、代わりにXBox360が幅を利かせているので、特にPS3を買おうという気はない。それでもPS3が発売されて以来、いろいろな関連記事が目に付くので何となく目を通してみていたところ、興味深い記事をいくつか見つけた。

 一つは『しぼむ夢の構想・「PS3」は結局普通のゲーム機なのか』(11月17日)と題したコラムである。それによると、「プレイステーション」の生みの親でもあるSCEの久多良木健社長は、

 PS3を最終的にはオープンソースの基本ソフト「リナックス」を搭載したPCに発展させ、PCのデファクトスタンダードであるマイクロソフトのウィンドウズPCを脅かす地位にまで高める

という構想を抱いていたという。この構想のキーとなるのが、SP3に搭載された「Cell」チップである。このCellの構想が立ち上がった2002年には、

セルを搭載したPS3が計算パワーに余裕を持つときは、ネットワークを通じて計算処理を肩代わりし、要求された計算を処理してデータを戻す。ネットワークに接続されたすべてのPS3が巨大なコンピュータ群として個々のマシンを補い合い、全体としてハイパワーPCとして機能する。それによって、一定のペースでしか性能の向上が見られないコンピュータの性能を、一気にPS2の1000倍まで引き上げるというビジョン

があったそうである。ネットワークを使った分散処理だ。当時、SonyがIBMや東芝と組んでCellの開発を始めるというニュースを読んだのは覚えているが、こんなことを考えていたとは全く知らなかった。へぇー。

 ただ肝心のCellの開発では、Sony内部で開発方針に関して紆余曲折があったらしく、その辺の様子は『久夛良木氏を見放したソニーの迷走』(11月13日)というこちらのコラムから伺うことができる。その結果、

分散コンピューティングの概念は結局は、セルのなかにコアを8個搭載するマルチコアが並列に作業をしてスーパーコンピュータ並の性能を引き出すというコンセプトまで縮小された。当初の構想は、もう過去の一種のペーパーウエアのようなものになったと考えられていた。(『しぼむ夢の構想・「PS3」は結局普通のゲーム機なのか』より)

ところが、

今年9月の「東京ゲームショウ」の基調講演で、久多良木氏はこのオリジナルの構想をまだ諦めていないことを明かにし、話はややこしくなる。その講演は、数年後にはPS3のセルの計算能力を使い、ネットワークを通じて劇的に性能を引き上げるようなアプリケーションの登場をにじませた内容だった。(同コラムより)

 この最終アプリケーションのために実験的な試みは、実は既に始まっているのではないか。そう思ったのは、このニュースを読んでからである。題して「SCE、PS3でがん研究に参加―スパコン並みの性能活用」(11月17日)。参加できるのはスタンフォード大学の研究である。実は2002年当時既に、「スタンフォード大学のたんぱく質の構造研究に、PS3を用いた分散処理が使用できるようになる」という話がされているから、スタンフォード大学とはCellの開発当初から何らかの繋がりがあるようだ。

 通常ならスーパーコンピュータが要求されるような大規模・複雑な計算を、個人所有のパソコンの未使用計算能力を使って処理しようという話は結構以前からある。通常のPC使用状況では、ワードやエクセル、メーラー等々のアプリケーションを複数使っていても、時間平均で50~90%のCPU計算能力は使用されていない。各パソコンの計算能力は遅くとも、この未使用計算能力を世界規模で束ねれば、スーパーコンピューターに匹敵する計算が可能になるというのが、その趣旨だ。天文学的な問題を対象にしているSETIなどは代表的な例ではないかと思う。参加者はもちろんボランティア。インターネットに接続された、クライアントとなる自分のパソコンに専用アプリケーションをインストールすれば、バックグラウンドでサーバーからリクエストされた計算が行われ、自動的にサーバー側に計算結果を送信するしくみである。
 久夛良木氏の述べている構想では、各クライアント(PS3)が受動的に要求された計算を実行するだけでなく、もう一歩踏み込んで、能動的に架空の’ハイパワーPC’(計算要求及び計算結果を集約する側)に計算を要求するという点が、上に挙げたようなネットワークを使った従来の分散処理プロジェクトと異なる(もし間違ってたらご指摘願います)。

 説明が長くなったが、上記ニュースによれば、まずはPS3でボランティアができるということだ。上述のガン研究に参加するために必要となるアプリケーションは'Cure@PLAYSTATION 3'と呼ばれるらしい。面白いことに、これに関しての情報は、XBox360を擁するマイクロソフトのMSNニュースサイトには載っているが('Sony PlayStation 3 gamers to be asked to aid cancer research (AP, 11/17)')、SCEのウェブサイトでは私が探した限りでは全く見つからない。
 ちなみに2002年にはたんぱく質の構造研究、今回はガン研究という内容だったので、違うプロジェクトなのかと思いきや、何のことはない、ガンにまつわるたんぱく質の構造研究が対象らしい。違う表現のせいでややこしいが、2002年当時から対象となる研究は変わっていない。

 ユーザー側からすれば、便利な話だろう。ゲーム機をネットワークに繋げておくだけで、言うなれば人類の健康のための研究に貢献できるのだ(笑)。PS3をねだる時に、「遊ぶだけじゃなくて、ボランティアもできるんだよ」と言うのも手かもしれない(笑)。何ともズボラなボランティアだが。必要となるアプリケーションの名前'Cure@PLAYSTATION 3'も、SCE側のPR効果を狙っただけでなく、参加ユーザーのボランティア心をくすぐる名前になっていると思うのは、勘繰り過ぎだろうか。

 とは言え、実際にゲームコンソールを使ってこういったプロジェクトに貢献できるようになるのは、良いことだと思う。ただ気になるのが、現在の状況では、ユーザー側には参加するプロジェクトを選ぶ権利は与えられていない。当初の久多良木氏の構想通りに、PS3がリナックスを搭載したマシンになるとしたら、スタンフォード大学の研究に限らず、様々なプロジェクトのためのPS3向けクライアントアプリケーションを開発することが可能だから、ユーザー側には複数の選択肢ができるはずだ。しかしPS3が専用のOSを搭載している限り、ソニー及びSCEと何らかの協力関係がある、あるいは提携を結んだ機関とのプロジェクトしか、選択肢に挙がり得ないのではないのだろうか?

 ゲームコンソール向けでは初の分散処理用アプリケーションとなるはずの'Cure@PLAYSTATION 3'はまだリリースされておらず、リリース時期も不明。リリースされたら、また詳しい内容について見てみたいと思う。更に、先の話に立ち戻って、久多良木氏が狙っているという、「PS3のセルの計算能力を使い、ネットワークを通じて劇的に性能を引き上げるようなアプリケーション」の先行きも、気になるところ。XBox360をHD(高品位)画像ファイルのストリーミングに使おうとしている我が家でも、ゲームコンソールは既にゲームだけのものではなくなってきている。PS3はこれからどこへ向かうのだろうか。
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