ベルギー

ベルギーへ(その4)

 ベルギーへ(その3)の続き。

 今回の旅行の目的である、友人の結婚式当日。以前から着物を着ていくことに決めていたが、海外で単を着るほど数は持っていない。当然袷になるのだが、既に6月中旬で、しかも恐ろしいほどに天気が良い。相当暑くなるだろうと、覚悟して出かけた。

 披露宴は広い庭園で行われたが、しかし、文字通りテントの「お陰」で、それ程暑い思いをしなくて済むのには助かった。それに着る側の苦労はさて置き、着物姿が他の招待客や花嫁達にも喜ばれると、苦労した甲斐があったと思う。また、きちんと正装しているという印象を与えるからだろう、色々と待遇が良くなるのは嬉しい。着物万歳!

 興味深かったのが、花嫁が少数の外国客のために英語でスピーチを行ったこと。公用語でないにも関わらず、それだけ普通に英語が解されるということだろう。実際に、話をした殆どの人は、英語での会話に全く問題が無かった。フランス語も公用語であることを考えると、皆一体何ヶ国語話せるのだろう。言語体系から考えれば、日本語ほどかけ離れている訳ではないので、各語の習得はそれ程難しくないのだろうが、複数言語を操ることができるのは、それだけで何となく羨ましい。
 それにしても、ベルギーはスローフードの国とは聞かされていたが、4時に始まった宴とディナーが花火で締めくくられて終わった頃には、12時もとうに過ぎてしまっていた…。

 旅行最終日には、英仏海峡までの帰途にブリュッセル(Bruxelles)とブルージュ(Bruges)に立ち寄った。

 ブリュッセルと言えば、国連本部があることで有名だ。でも、昼食の後にそれらしき建物をちらりと見ただけで、特に観光らしい観光もしないで、通り過ぎてしまった。アントワープと比べると、単なる大都市に見えてしまったのも理由の一つ。でも通りすがりに見えた赤線地区(ベルギーでは売買春は合法)の印象は強かった。綺麗な下着を着けたマネキンだと思って見たのが、実は生きた女性だったからだ。文字通り、ショーウィンドウで自分の「商品」である体を売りに出しているのだが、そこにはある種のバイタリティと、綺麗ごとばかりではない現実主義があるのを感じた。

 ブルージュは、アントワープ以前に港湾として栄えた街。15、16世紀の建築物が残り、今は観光で賑わっている。昔の栄華の名残と、小都市のこじんまりと落ち付いた雰囲気を同時に楽しむことができる、きれいな街だ。
Bruges Bruges_2

 やはりここでも、ビールを飲みながらまったりしたり、チョコレートショップのショーウィンドウを覗きながらぶらぶら歩いたりして、のんびりと時間を過ごした。

 帰りは、行きと同様に道路をすっ飛ばして(笑)、英仏海峡入り口に到着。するとあろうことか、再び「技術的な問題により」列車が1時間以上遅れるとのこと。あぁデジャヴ。仕方が無いので、同様に足止めをくって駐車している車を見て歩いて時間をつぶした。

 実は同じ週末にル・マン(Le Mans)24時間耐久レースが開催されていて、その帰りと思われる車が駐車場にも沢山見かけられた。色々なタイプの車がいて面白かったが、中でも個人的に目を引かれたのが、TVR サガリス(Sagaris)2台。タスカン(Tuscan)はたまに走っているのを見るが、サガリスを間近に見るのは初めてだ。スポイラーの形がユニーク。TVR独特のカメレオンカラーの深緑とシルバーだったが、こんなサガリス2台が並走するのを見る機会は、あまりないだろうと思う。
 
 家に到着した時には深夜になったが、今回はあちこちに足を運ぶことができて、とても満足。運転の他にも観光案内をしてくれた夫にも、この場を借りて感謝!
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ベルギーへ(その3) ~アントワープ~

 ベルギーへ(その2)の続き。

 アントワープはルーベンスの生地で有名だが、今回何も予習をしていなかった私は、現地につくまでそんなことも知らなかった。ちなみに前回触れた大聖堂は、日本人には「フランダースの犬」に出てくる、ルーベンスが描いた「聖母昇天」があることで有名だ。しかしこれは特に今回私は見なかった(理由はない)。

 その代わりに、という訳でもないのだが、ルーベンス博物館へ足を運んだ。実際に彼が住んだ家が、そのまま現在も博物館として公開されているものだ。現在のアントワープのショッピングエリア近くにある3階建ての館で、前に比較的広い庭もついている。立地といい、外装・内装からしても、当時の富裕層が暮らした家だと容易に想像できる。下の銅版画は17世紀初頭のこの家の正面図だが、驚くべきことに現在も全く変わっていない。

1627.jpg 1610.jpg ルーベンス博物館

 家の中に入ると、台所や使用人の使う部屋を除いて、ずい分と天井が高いことに気がつく。1.5階分以上あるだろう。さらに腰の辺りから天井まで続く窓が沢山付いているので、部屋の中が明るく、とても開放感のある空間だ。柱や鎧戸などにも、丁寧な装飾が施されている。ただその装飾にも、軽快な美しさというよりは、堅実な重厚さが感じられるのは、やはり国民性なのだろう。また、フランドル絵画にはよく、特徴のある丸みがかった真鍮のシャンデリアが天井から下がっているのが描かれているが、全く同じようなシャンデリアが各部屋にもかかっていた。何気ないことだが、4世紀前に描かれた絵の風景を、時代を超えて実際に目にして実感できるのは嬉しいものだ。これはなんとなく、ジグソーのピースが嵌った時の感覚に似ている。

 庭のベンチで一休みしながら外壁の装飾を眺めていると、ポセイドンの彫像に気が付く。水に関わりの深い街ならではだ。さらにその上に奇妙な怪物が踊っている。よく見てみると蛸なのだが、妙に邪悪な面構えで、ここでは悪役を仰せつかっているらしい。

 博物館を後にした後は、カフェでベルギービールを飲みながら新聞を読んだり、人々を眺めたりしてのんびりと過ごす。観光名所を制覇するのも、それはそれでいいが、街の雰囲気を楽しむのも、旅の一番の楽しみの一つだと思う。ところで、ベルギービールには、各銘柄ごとに特別のグラスがあり、違うビールを違うグラスから飲むと病気になるそうだ(笑)。ビールを飲む方には楽しみが増えるが、何せ400種類ほどあると言われるベルギービールである。店は全てのグラスを用意しなくてはならないのだから、大変だろう。さくらんぼのビールも、名物の一つと言われて試してみたが、綺麗なルビー色の見た目に似合った、ほんのり甘いビールで、おいしかった。 <つづく>

ベルギーへ(その2) ~アントワープ~

 ベルギーへ(その1)の続き。

 アントワープに近づくにつれ、巨大なクレーンが沢山目に付くようになる。貨物を船に積み込むためのクレーンだ。ヨーロッパの都市では、街に近づくにつれ、まず街の中心に立つ教会や聖堂の尖塔が見え始め、それから街の全容が見えてくるというのがよくあるパターンだが、アントワープに関してはちょっと違うよう。14世紀ごろから港湾都市として栄えた都市ならではだが、すごいと思うのは、現在もその地位を保持していること。ヨーロッパで2番目の量の貨物出荷量(?)があるらしい。

 街に入ると、目を引くのが庁舎の前にある噴水の彫像。よく見ると「切り取られた手」を今にも放り投げようとしている。伝説によると、神様かなにか(?記憶が曖昧…)が放り投げた、その手が落ちたところにアントワープができたとか。アントワープという街の名前そのものも「落ちた手」という意味だそうだ。へぇ。
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 写真はこちらから拝借

 同じく街の中心にある、繊細な装飾が施された大聖堂も目を引く。ただ、なぜか二つある(はずの)塔の片方が、やけに低い。なんでも、建設を始めてから2世紀かかったところで建設を止めてしまったため、片方の尖塔は美しく仕上がったが、もう片方は低いまま、申し訳のような屋根(フタのようにも見える)をかぶせて、終わりとしたらしい。要は資金が底をついたためだが、なんだか可笑しい。
antwerp.jpg 写真はこちらから拝借

 街全体の雰囲気は16、17世紀の建物が今も沢山残っていて、落ち着いていながらも華やかな感じ。でもこの印象は、街を行きかう人々の服装からもくるのだろうか、地元の人々は、一見して観光客と分かる人々とは明らかに違う、いかにもおしゃれないでたちで歩いている。年配の女性もフェミニンなハイヒールに膝丈のスカートで歩いているのをよく見たが、それがエレガントでもあり、似合ってもいて素敵だった。アントワープはベルギーの中でも1、2番目に豊かな街だそうだが、街全体から受ける印象もそれを反映しているのだろう。

 夜には、レストランの屋外席で食事をしたが、ちょうどワールドカップの真っ最中だからだろう、全ての客が試合を見られるように、テレビがあちこちに設置してあった。さすがヨーロッパ。サッカー熱はどこも同じようだ。ベルギービールを飲みながら観たのが、オランダ対コートジボワールの試合。オランダが2対1で勝ったのだが、試合終了直後にオレンジ色(オランダのナショナルカラー)のTシャツを着た人々が、広場を走り回ったり、大声を上げたりと、大はしゃぎ。ベルギー人が、「またオランダ人が…」といった様子でそれを冷ややかに見ていたのが、何だか対照的だった。

 オランダ人とベルギー人は、国境を接する隣国同士で、同じフラマン語圏に属するのに、仲がいいというわけでもないらしい。おまけに、同じフラマン語といっても、読み書きの表記は同じだが、発音が違うため、ベルギー人とオランダ人同士のフラマン語では意思の疎通が出来ないらしい。友人のベルギー人に言わせると、なんでもこの二国民は性格の違ういとこ同士のようなものとか。似てる部分があるからこそ、お互いの違う部分が余計に目に付くのかもしれない。「背が高くて騒がしかったら、それはオランダ人」という、彼のオランダ人の定義には笑った。

 テレビで試合を見ながらふと気が付いたのが、アルコール飲料の広告の多さ。あらゆる種類のアルコールの広告が、とても多い。要はそれだけ売れるし、飲まれているのだろう。ベルギービールも300、400種類あるというし。それにも関わらず、金曜日の夜、夜中の一時を過ぎてもまだ8時ごろかと見まごう程にぎわっているレストランやバーをタクシーで見ながら通り過ぎたが、酔っ払って騒いでいるような人は全くない。金曜日の晩といえば、どこからか雄たけびが聞こえてくることが多い英国、この点についてはベルギー人の爪の垢でも飲ませるといいのかも。



※ 手持ちのデジカメが故障してしまったため、今回の旅行に関する写真はあちこちからお借りしています。

ベルギーへ (その1)

 夫の友人の結婚式に出席するために、ベルギーはアントワープに16日から3泊4日で行ってきた。夫はアントワープに数年住んでいたので、自分の庭のような場所だが、私はベルギーに行くこと自体初めてで、しばらく前から楽しみにしていた旅行だ。今回は車で一路陸路を行く。

 出発当日は、M25(ロンドンを中心とした環状道路。東京の環七・環八みたいなもの)の渋滞を避けるために、朝4:00前に出発。結果、睡眠は3時間程度で、少々つらい。外はまだ暗いものの、東の空が既に少し白みかけているのが見える。

 英国-フランス間をつなぐ海峡トンネル(Channel Tunnel、トンネルサービス自体はEuro Tunnelと称される)への道すがら、英国製のクラシックなスポーツオープンカー二台が並走しているのを見た。共に年配の夫婦連れで、女性はサングラスにスカーフを頭にかぶり、そこだけちょっと違う時間が流れていた。年を取ってからあんな風にモータースポーツを楽しむのは、とても素敵だと思う。

 ユーロトンネル入り口に5:20頃到着。ここで、夫が「列車が遅れているようだ」と言い出す。何のことか分からず、きょとんとしていると、「列車のシステムで問題があったらしい」と、重ねて言う。しばらくかみ合わない話をした後で分かったが、トンネルと言えども、関門海峡トンネルのように、中を車で運転して通過するわけではないらしい。何度も海峡トンネルを通過している夫は逆に、車を列車に載せるということを私が知らないということに、気づかなかったようだ。私は今回初めて知ってびっくり。ここから合流した友人にこの話をしたら、笑われてしまった。

 実際、全てのシステムは空港で飛行機に乗る際のシステムとほぼ同じように出来ている。まずトンネル入り口でチェックインし、ここで搭乗する列車のチケットを手に入れる。その後、パーキングに入って列車までの時間をつぶすもよし、パスポートコントロールを済ませて、デューティーフリーで時間をつぶすもよし。ただここで異なるのは、動くのが人ではなくて、車だということ。1時間にほぼ2本走っている各列車の搭乗時間が近づくと、搭乗ゲートに行き、後はサインに従って列車に乗り入れるだけだ。

 海峡を渡るには、他にフェリーを使う手もあるが、それだと2-3時間かかるのに比べ、ユーロトンネルを使うと1時間そこそこらしい。ただ今回は運悪く列車の遅延のために、6時出発予定が2時間近くずれ込み、延々とパーキングで待つ羽目になった。このトンネルの建設には巨額の費用がかかったと聞くが、この様子だと、中を走る列車の信頼性が、英国で通常走っている列車(すぐに遅れる上に高い)と同じレベルのようで、先が思いやられる…。
 
 やっと列車の準備が整い、初めて列車を目にするが、この列車、普通の低い車用の車両は二階建てになっている。列車自体はかなり長い連結車両だったのにもかかわらず、車が載り込み始めてから列車が動き出すまでは案外早く、15分かからなかったと思う。さらに30分でフランス側に到着。なるほど、(動けば)結構早い。下の写真は、ユーロトンネル内を走る列車の内部の様子。
Euro Tunnel Train写真はWikipediaから拝借 

 フランスの一般道路を走り始めるなり、英国とは風景が一変したことに気づく。とにかく土地が平らで、右を見ても左を見ても、視線をさえぎるものがない。だから空も広い。アメリカでも似たような風景を見たのを思い出す。英国は日本と比較するとずっと平坦な土地だが、それでもなだらかな丘の向こうにまた丘が続く、といった風景なので、こういう風景はまた違っていて新鮮だ。

 フランスの道路を走って30分で、フランス-ベルギー間国境を越える。国境からさらに1時間ちょっとで、今回の目的地であるアントワープに到着した。列車の遅れさえなければ、我が家からアントワープまで車で4時間程の距離ということだ。ヨーロッパ圏内のモノと人の流れも、なんとなくではあるが、身をもって感じることができて面白い。

 運転していて気づくのが、大陸に入ってからの運転マナーの違い。特にベルギーに入ってから、英国では絶対にあり得ないような乱暴な運転が目に付く。例えば、車間距離をとらない上に、外側車線からの追い越し、急な車線変更や割り込みは当たり前。これは夫に言わせると、’ベルギーでは当たり前’らしく、更に「郷に入れば…」で同様の運転をするものだから、助手席に座っている私はひやひやさせられた。ただ、運転マナーが乱暴な分、我慢の閾値が高いというか、互いに少々のことでは怒ったり怒鳴りあったりしないらしい。運転マナーに比較的厳しい英国はその分閾値が低いので、下手な運転には中指を立てたりするのも見かけるが、まあこれもお国柄の違いということか。  <つづく
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