英国

英国内での引っ越しと引っ越し業者

 幼少期から大学に入る頃まで、親の仕事の関係で引っ越しを多く経験した子供時代だったが、英国に移住後もこんなに引っ越しするとは思わなかった。

 今年で渡英後13年になるが、今まで英国内7か所を転々と移り住んできた。平均して2年弱に一回の割合で引っ越ししたことになる。

 住んだ土地も、ロンドンをスタートとしてイングランド南西部で2、3 か所、イングランド北西部で2 か所ほど、そしてイーストアングリアと呼ばれる、イングランド東部と、ずいぶん広範囲にわたる。日本的に言えば、例えば関西圏内で引っ越ししたあとに東北地方に移り、それから四国に引っ越してから次は北越地方に引っ越すようなものだろうか。外国人なのに、普通の英国人と比べても随分違う地方を渡り歩いてきたと胸を張って言える(だから?)。

 家財道具が少ないうちは、白バン車で何回か往復して荷物を運んだりしたが、何回目からかは忙しすぎてそんなこともしておられず、また引っ越し距離が伸びたこともあって、引っ越し業者の梱包も含めた引っ越しプランを使って楽をさせてもらった。

 というものの、英国引っ越し業者の梱包や搬送は、やはり日本のそれと比べるとどうしも荒っぽく感じる。当然ながらあちらもプロなので、物品にダメージを与えることは(あまり)ないものの、ちょっとした荷物の上げ下ろしの際に、え、そんなに荒っぽく置かないで!と思わされたり、上下が指定してあるにもかかわらず、横向きに運んでいたり。食器等の梱包の丁寧さはどうも担当の人に依るようだが、日本の和食器を包む要領を期待すると、やはりなんといういうか、デリカシーのない包み方・詰め方だなぁと開梱時に思わされることも多々である。

 常々思うのが、日本の和食器というものが、形も多様なうえ、磁器より強度の低い焼き物などもあるし、また漆の食器などもこすってキズが付かないように気を付けないといけない、などなど、多岐にわたる気遣いを必要とするものであるから、日本の引っ越し業者の梱包は、世界一丁寧なのではないかと思う。さらに、屋内では靴を脱ぐのは日本では当然として、さらに床やカーペットにいかなる汚れやダメージも許さない、世界一厳しい顧客であろう日本人相手に引っ越しの仕事を請け負うわけだから、これに勝る引っ越し業者は他国にはいないのではないか。

 そういう引っ越し業者を見ながら子供の頃から数ある引っ越しを経験した後で英国の引っ越し業者の仕事ぶりを見ると、どうしてもハラハラしてしまう。

 また、段ボール箱を閉じるのに使ういわゆるガムテープも、英国のそれは一般的に質が悪く、テープの上に重ね貼りするとあっけなくはがれてくるし、英国で一般的に手に入る油性ペンの類はすぐ書けなくなる。こういう、普通だったら小さなイライラも、てんやわんやで荷造り、搬出作業を行っている最中には、それなりに大きなイライラになる。

 幸いながら渡英して何年か経つと、郷に入っては郷に従えではないが、さまざまな「英国あるある」に慣れざるを得ないために、その手のストレス耐性がだんだん高まってくるのが普通である。言い換えれば、それはそれとしてある程度許容してしまうのだ。これは、渡英後に舌の感度が英国での料理に応じてだんだんと落ちてくる(「舌が肥える」の反対)のと一緒である(笑。だから私も渡英直後だったら悲鳴を上げていたかもしれないような引っ越し中の出来事も、淡々と受け入れるようになった。ような気がする。

 とは言いつつも、英国などある程度先進国ならば引っ越し業者を使うこともできるが、発展途上国への引っ越しなどは私の想像もつかないようなびっくりと困難が沢山あるのだろう。

 以上、最後の引っ越し後の最後のダンボール箱を片付けながら徒然に思ったことである。それにしても引っ越しは当分勘弁したい…。
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Brexit、米国大統領選…、選挙権というもの

 英国のEU残留・離脱を英国民に問う国民投票では離脱、いわゆるBrexit が多数票を取り、米国大統領選では事前予想をすべて覆す結果となった。将来2016年を振り返った時に、民主主義の骨幹である国民の意を問う投票という仕組みが実際に国家の将来利益につながる国家的意思決定をもたらすことができるかどうか、という問いを投げかけた一年になるのではないかと想像している。

 いずれにせよ、それぞれの結果は出てしまっており、結果分析はこの世に星の数ほど出ているから、ここでは敢えて触れない。

 英国のEU残留・離脱の国民投票に関しては、投票前に私の知人・友人達の間でもずいぶん色々な議論で盛り上がったが、その際に(当然といえば当然だが)私はどちらに投票するかと尋ねられることも多かった。その際に、「もし投票できるならば…、」と口を開くと、「え、投票できるんじゃないの?」と随分驚かれたものだ。

 簡潔に言えば、私は英国での投票権を持っていない。

 理由は英国市民ではないからである。これを説明すると、「でも英国市民と結婚しているんだから、英国市民じゃないの?」と畳みかけられる。そう、英国市民と結婚して英国在住ならば、自動的に英国市民権を与えられるわけではないが、英国市民権を得ることは可能なのだ。英語でのコミュニケーションに問題がないことを証明するテストを受け、英国の歴史・文化に関する基礎知識があることを証明する試験も受け、それらに合格したうえで各種必要書類がそろえば、英国市民権を獲得できる。

 ここで、もう少し書き加えておくと、実は英国市民でなくても投票できる人たちがいる。コモンウェルス(Commonwelth)と呼ばれる英国植民地支配下にあった国々の出身で特定の条件を満たす人々、及び、アイルランド国籍保有者だ。当然ながら英国に在住していることが基本条件だが。

 ただし、である。問題は英国で市民権を獲得できるかどうかではなく、日本人として多国籍を獲得できるかという点なのだ。

 この点に関しては、日本でも某国会議員に関する話題でかなり詳細にメディアに取り上げられて一般に認知されるようになったらしいが、念のためにもう一度ここでも書いておくと、日本政府は日本人の二重国籍保有を認めておらず、もっと明確に言うならば、日本人が多国籍を「意志的に」獲得した場合、日本国籍を失うことになることになるのだ。まぁ、こっそり米国あたりの市民権を獲得して密かに二重国籍を保有している海外在住日本人も多いことと思うが、上記が正式なところである。この事実を知らずに日本帰国時に外国パスポートを成田で見せたが故に、実際に日本国籍はく奪の憂き目にあった日本人もいると聞く(これも色んな意味でなんだかなぁ…、、と思わせられる話だが)。ちなみに、国籍はく奪はそれまでに払った年金もパーになるし、日本に残した銀行預金等の財産を失うことにもなりかねないし、戸籍から除籍されるから遺産相続等にも問題が生じるはずだ。21世紀において二重国籍を認めない国も国際的に珍しいくらいだと思うし、難民受け入れに関する日本政府の否定的な姿勢といい、国際的な人の動きが日常である今日において、時代錯誤的に閉鎖的だと言わざるを得ない。

 私は英国移住後に上記以外にも様々な点を考慮した上で、英国市民権を獲得しないことに決めたのだ。日本のパスポートがあれば大体どこの国へも入国できるから、特に英国パスポートの必要を感じないというのも理由の一つ。だから英国での私のポジションは「住民ビザ(Residential Visa)」を持って英国に居住している外国人移民である。

 日々の生活に影響を及ぼす重要事項に関して投票できないというのは、なかなか歯がゆいもの。だから一歩引いて傍観者を決め込んで政治討論を聞くことにしている。

 投票権は空気と同じ、無くなったり使えなくなったりするとその有難味が分かる(笑。持っている人は使う機会のある時にきちんと投票権を行使しよう。

二本指のジェスチャー

 ここのところちょっと’ゆるい’内容の記事が続いたので、久々に英国らしい話題を書いてみよう。 

 写真に写るときに、ピースサインと呼ばれる、二本指をカメラに向ける動作をするのは、なぜか日本人特有の行動として世界的に有名らしい。これも最近は日本文化と一緒にアジア圏へ広がってきているようだが。

 このピースサイン、英語圏では恐らく’V(ヴィー)サイン’という呼び方の方が一般的だ。
これは、チャーチルが第二次世界大戦中後に勝利(Victory)を意味するシンボルとして使ったことに拠る。
Churchill_V_sign チャーチルのVサイン (Wikipedia 'V sign' より

 今年の夏にフランスをドライブ中、とある小さな田舎町で巨大なチャーチルのVサインの手だけの銅像、それも手首から上だけなのに2メートル以上はあろうかというものを見た。おそらく第二次世界大戦中に英兵によってドイツ軍から開放された地域のひとつだったのだろう。日本でこういった話はあまり知られていないかもしれないが、それくらい、このサインは戦争に絡んだものなのだ。

 気をつけたいのがこのVサイン、英国においては手の向け方によって大きく意味が変わってしまう。

 日本人の’ピースサイン’、あるいはチャーチルのVサイン、どちらも手のひらを相手側に向ける。これが、同じ手の形でも手のひらを自分側に向ける(手の甲を相手側に向ける)と、相手を侮辱する意味になるのである。
 指を二本使ったジェスチャーなので、このジェスチャーを呼ぶ際にはツー・フィンガーズ(two fingers)という言葉が使われたりする。そのまんまである。
 
Kes_fingers くれぐれも英国でこんなことをしないように~(殴られますよ)

 このジェスチャーの成り立ちというのが面白い。

 通説はこうだ。
15世紀にアジンコート(Agincourt)でイングランドとフランスが戦った百年戦争当時、イングランドの長弓(大弓とも呼ばれる)手は非常に手強いことで知られており、フランス軍は彼ら相手に苦戦したらしい。そのため、フランス軍は捕虜となったイングランド長弓手達の右手人差し指と中指を切断してしまった。この二本の指がなければ、弓は引けなくなる。これを知ったイングランド長弓手達は激怒して、フランス軍に向けて「俺たちはまだ指があるんだ。これにものを言わせてやるぞ」と言ったかどうかは知らないが、、、そういった意味で敵に二本指を立てて見せたのが始まりらしい。
 とは言え、これはあくまで通説で、歴史的にアジンコートの戦いが本当に起源かどうかには疑問符がつくそうなので、あしからず。

 こういった話を聞くにつけ、また実際の用法を見ても(笑)、このジェスチャーは相手を侮辱するというよりは、挑戦的・挑発的な態度を誇示するものと言えるだろう。

 他に相手を侮辱するジェスチャーとしては、手を’グー’の形にしてから中指を上に向けて立てるジェスチャーがよく知られている。ただし、これには性的な意味も含まれてることをご存知の方は多いはずだ。それと比較すると、この二本指ジェスチャーは性的は意味合いは含まないため、ある意味もう少し「品がいい」と言えるかもしれない(比較しての話。このジェスチャー自体は決してお品がいいものではないので、念のため)。

 このジェスチャーはイングランド(England)というローカルな領域が発祥地であるという歴史的背景から、英国とその旧植民地限定で知られている。だから、アメリカ人にはおそらく通用しないだろう。試したことはないが。
 そのためだろう、物知りウィキペディアによると(笑)、ジョージ・ブッシュ(父)大統領がオーストラリアを訪問した際に、Vサインのつもりでこの二本指ジェスチャーをやってしまったそうだ(爆)。それを目にしたオーストラリア国民は一体どういった顔をしたことか。。息子だけでなく、父親も人知れずこんなことをやらかしてくれていたらしい。

 皆さんもアメリカ大統領並みの失敗をしないように、英国にお越しの際にはどうぞお気をつけて。


 ちなみに、上記写真に使った映画「ケス(Kes)」はケン・ローチ(Ken Loach)監督による英国映画の名作の一つである。日本では全く知られていないと思われるので、そのうちこの映画の紹介もしてみたい。

野生のウサギ

 ある日、ダイニングの窓からぼんやり外を見ていると、なんだか道路の向かい側の草むらに動くものが…?交通量は多くはないけれど、比較的スピードを出して走る車も多い道路なので、気になって外に出て何だか確かめてみた。

 ウサギだった。ただ頭や耳にハゲがあるし、目も汚れている。きっと病気で弱っているのに違いない。それにしても、こんなに道路沿いにいてはいつ轢かれてしまってもおかしくないので、とりあえず動いてもらうことに。手を近づければ逃げてくれるだとうと思いきや、どうも目が見えない様子。私が近づいても一向に逃げる気配がない。これでは轢かれてしまう可能性が倍増である。
 
 仕方なく捕まえてみようとすると、あっけなく腕のなかにおさまってしまった。以前にもちょっと書いたように、野生のウサギは周辺にたくさんいて珍しいものではないが、実際に触るのはもちろん初めてである。でも思っていたよりずっと軽い。それに、ふかふかの柔らかい毛皮がなんとも気持ちよい。コートやバッグなどにも使われている「ラビットファー」そのものなのだが、こちらの方が毛も密だし、それ自体が暖かくて心地が良いのだ。

 ふかふかの軽いいのちを抱えながら、本来の目的であった、安全な草むらまで持っていって逃がしてやった(毛皮の感触が名残惜しかったが…)。
 
 無事に仲間と会って巣穴に帰ってくれれば、と思っていたが、2、3日後に再びこのウサギに、今度は玄関前で再会した。目も見えないのにどうやって道路を渡ったのか不思議だが、運がよかったのだろう。でもハゲが増えていて見るからに前回より衰弱している。

 後で聞いた話だが、病気になったウサギは巣穴から追い出されてしまうそうだ。仲間に伝染するのを防ぐためらしい。その際に、仲間から蹴られたり噛まれたりしてさらに痛手を負うことがあるとか。前回は良かれと思って巣穴のたくさんある方向に逃がしてやったが、もしかするとそれが裏目に出てしまったのかもしれない。かわいそうなことをしてしまった。

 ウサギは少しすると家の前に駐車してあった車の下にもぐってしまった。頭がつかえそうな位の高さに天井ができて、巣穴にいるのと似ていて安心したのかもしれない。ウサギの周りにおちているニンジンのかけらは、私が投げ入れてみたもの。それにも見向きもせず、身じろぎもしないでじっとしたままだった。
injured rabbit 冬はきっと越せないだろう…

 2、3、時間後にもう一度見てみると、もうどこかへ行ってしまっていた。

 草原を散歩していると、動物の亡骸をたまに目にすることもある。命を失ってしまった有機体を見ても、自然の摂理、弱肉強食と割り切ることができるし、それ自体は私の感情にあまり訴えてこない。 しかしながら、痛手を負いながらもまだ生きている動物を見るのは、切ないものだ。

 あのウサギ、まだどこかをさまよっているのか、それとも…。

海岸へピクニック

 9月半ばに一週間、遅い夏休みを取った。8月は涼しい日が多く、夏とは思えないような天気が続いたが、9月に入ってから少々持ち直したようである。そこで取った休暇、せっかくだから海岸に遊びに行こう、ということになった。

 目的地はこちら(リンク先に地図)、イングランド南西部はドーセット(Dorset)の海岸である。浸食できた地形でも有名なラルワース・コーヴ(Lulworth Cove)とダードル・ドア(Durdle Door)に行ってみた。

Lulworth Cove Colourful boats
Lulworth Cove
。上記リンク先のGoogleの衛星写真でも分かるように、見事な円形の湾である(Coveとは日本語で入り江の意)。外海から切り離された静かな水上には、色鮮やかなボートが沢山浮かんでいてきれい。

 ラルワース・コーヴから少し車で移動すると、侵食によってできたゲートのような形をしたダードル・ドア(Durdle Door)も見ることができる。
Durdle Door The Man O' War
ダードル・ドア(左)と、すぐ隣のマン・オ・ウォー(The Man 'O War)(右)。
晴れていたらもっと水の色も鮮やかできれいだったろうが、残念ながら曇り空の下での撮影。

 このLulworth CoveとDurdle Doorも含まれるこのドーセットからイースト・デヴォン(East Devon)の海岸一帯は185万年前の恐竜時代の地層が露出しており、ユネスコの世界遺産にも登録されている。写真でも分るように地層が隆起によって露出しているので、化石探しにもいい場所らしい。

layers coast line
 
 我々が訪れたのは9月も中旬で、一応オフシーズンに差し掛かっていた筈だが、それでも観光客で賑わっていた。これで夏のハイシーズンだったら、芋洗い状態になるのだろう。

 海岸沿いは波も静かで水深も浅いため、他にも犬を連れてきている人が沢山。ただ時期的に、水は冷たいという程ではないものの、海水浴するほどは暖かくはないため、泳いでいるのは犬ばかりだった(笑)。
1472587656_1753936400_b.jpg 初めての海を楽しむケイリー
fetch the stick 泳ぎがたくみなレトリーバー(拡大してどうぞ)

 海岸からの帰り道に、夏の終わりを感じさせる風景も。
End of summer Fisherman's house

 波打ち際の石はみな波に洗われて、穏かな丸い顔をしたものばかり。この日の土産に拾って帰った石は、今窓際に飾ってある。
Pebbles
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