2016年10月

[映画] スイス・アーミー・マン(Swiss Army Man)

 今回は久々に映画のレビューを。ターゲットは「スイス・アーミー・マン(Swiss Army Man)」

 アメリカ映画で7月にかの地でリリースされたばかりなので、現時点で邦題はおろか、日本でリリースされるかどうかも不明なのだが、「今までこんな映画見たことない(You've Never seen a movie like this)」というポスターに書かれた言葉の通り、コンセプトもストーリーも非常に斬新、かつ、とてもよくできた映画だったので、ここでも書かせて欲しい。

 登場人物はポール・ダノ(Paul Dano)演じる、冒頭シーンの無人島で自殺を試みるハンクと、ダニエル・ラドクリフ(Daniel Radcliffe)演じる死体(えっ!)のほぼ二人(と言っていいのか?)だけである。これだけ読んで、「何それ?!」と思わない人の方がおかしい。

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 ポール・ダノは今までにも独立系映画でかなりクセのある役を演じており、最近では英BBCの「戦争と平和」のドラマでもキーとなる役柄を演じていたりして、個人的にはとても力のある役者として目を付けていたが、この映画では彼ならではの、魅力のないキャラクターを魅力的に演じるという、いささか逆説的な、彼ならではの俳優としての力量を存分に見せてくれている。

 一方のダニエル・ラドクリフは、ハリー・ポッター映画の子役で名をなしたのは言わずもがな。最近は様々は独立系映画で多彩な役柄を演じているが、この映画では役柄をさらに広げたのではないかと思っている。なんせ、演じるのが死体なのだ(笑。普通ならそれは演技なのかと思われるところだが、この映画ではれっきとした、かつかなり難しい演技を要求される役どころを、実に自然に説得力のある形でこなしている。

 スイス・アーミー…と聞くと、普通はスイス・アーミー・ナイフを思い浮かべると思う。色んな場面で使えるツールを一つにまとめた万能ツールの代名詞だ。映画の中では、ラドクリフ演じる死体が様々な形でダノ演じるハンクを救うことを指しての映画タイトルとなっている。

 レビューや筋書きは昨今インターネット上で探せば簡単に見つかるが、この映画は是非予備知識なしで観て欲しい。観るものの想定外の外を行く筋書きと、ストーリーに似つかわしくない(?)美しい画像とカメラワーク、またそれに伴う音楽は、一見の価値がある。あちこちで挿入される微妙なユーモアにも、これで笑ってしまっていいのかと理性が惑いつつも気が付けば爆笑させられるという、今までにない笑わせられ方をした(苦笑。

 ただ、ここで釘をさしておくと、ユーモアのセンスや映画の設定そのものも含めて、万人向けの映画ではない。初デートにはおすすめしないし(笑、大人向けのユーモアが散りばめられているので、それらを余裕で受け止められる大人向けの映画かと思う。

 この物語は、誤解を承知で言うならば、グリム童話(子供向けに後年変えられたものではなく、オリジナルの方)が21世紀に生まれたらこういう話もありかもと思わされる、グロテスクながらも美しい(分かる人にはね)ストーリーだ。こういう映画を作成した勇気あるディレクターに拍手を送りたい。

評価:★★★★★(5.0/5.0)
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The Last of Us Remastered(ラスト・オブ・アス、リマスタード版) PS4

 リリースからずいぶん経つので今さらなレビューになるが、最近プレーしたゲームでこれは!と思ったゲームなので、一応ここにもエントリーを残しておきたいと思う。

 PS4版、ラスト・オブ・アス(The Last of Us, Remastered)だ。

 私は本腰を入れたゲーマーではないので、今はたまに買ったゲームをまたこれもたまにプレーする程度だから、コンプリートしたゲームはそれこそ数えるくらいしかない。その私をもってコンプリートに至らせるほど面白かったゲームだ。

 ストーリーを平たく言うと、ゲームにはよくありがちな、ゾンビと化した人々がうろつく世界を主人公の男性とその連れ合いとなる少女二人がサバイバルしていくというもの。だからゲーム開始直後は、まぁありがちなゲームの一つだろうと思ったのが、ゲームを進めるに従い、ストーリーに引き込まれたと共に、アクションも実に巧妙に少しずつ複雑になっていき、気が付くとまんまとゲームをコンプリートしていたという訳だ。

 ストーリー自体が細部に至るまで細かく練られていることが登場人物達のふとしたセリフからも分かるし、脇役のキャラクター設定もかなり細かく作りこまれているのが、物語にリアリティーを持たせている要因の一つだと思う。連れ合いの少女のいかにも十代らしい物言いやたまに出てくる冗談なども、キャラクターのリアリティーを増している。また主人公が対戦で使う武器等も、これ一つあれば大丈夫というものがなく、場面に応じてうまく使い分けていかないと各シーンをクリアできないことが多い。プレーが易しすぎずかつ難しすぎない、実にバランスが取れたデザインになっていて、プレーヤーを飽きさせず、ゲーム内のAIがよくできてるとうならせられた。またプレー中の各種コントロール方法も含めて、コアなプレーヤーからゲーム初心者まで幅広い層が楽しめるようにデザインされたゲームだと感じる。

 最近のゲームのグラフィックスはどれも相当のレベルに達しているので、昨今はその甲乙を一々とやかく言うレベルではなくなってきていると思うが、当然ながらラスト・オブ・アスの映像も細部に至るまでよく作りこまれている。森で出てくるシカの動き等も実にリアルかつ自然だし、植生やがれき、水面の動きなどの様々なテクスチャーも、説得力のある描写だ。また、ゲーム背景が世紀末描写にありがちな殺伐とした風景ばかりでなく、郊外には自然が残っている様子が描かれていたりして、簡単に言えば見た目に美しい描写も多いことも、長時間プレーを継続していく上で大きなポイントだと思う。

また、さりげなくいい仕事をしているのが、シーンに応じて流れる音楽だ。これが、いい。少しもの悲しいような、アコースティックなサウンドが気に入って、私などは音楽のアルバムを音楽ストリーミングサービスのスポティファイ(spotify.com)で聴いていた程だ。今までのゲームにはなかった音楽センスだと思う。

 ゲーム初心者もハードコア・プレーヤーも、プレーして損はないゲームなので、是非遊んでみてほしい。



 追伸:英国で発売されているのは恐らく北米版と同じと思われるので、日本版とは少々異なるかも知れないが、その点はお許しを。
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